From Nowhere To Somewhere ?

ビートルズの曲名から名を採った無定見、無我、無帰属の男が、どこかに辿りつけるのかという疑問文(題名、字面通り)

規制緩和しながら一部規制厳格化する、一見矛盾した要望

資本主義の暴走をいかに抑えるか (ちくま新書)

資本主義の暴走をいかに抑えるか (ちくま新書)

 ↑ 2009年の新書なんですけど、参院選というイベントを控えているので、アベノミクスがらみで本棚から取り出し、最終章だけ眺めてみたんです。興味深い記述がありました。それを下記囲み抜粋でご紹介します。

 

 一応、庶民派を自認したいので*1、あくまでも庶民的感覚から見て違和感を覚えるかどうかが選択の基準になっています。

 

 アベノミクスは規制緩和路線だし、第三の矢=成長戦略はこれから実践されていくだろうので(つまりまだ見ぬ結果を待つ状態…と信じたい)、ツッコミになるか微妙なんですけど、ネタとして抜粋をしてみようと思います。

 

 そもそも、僕が展開したいネタは「とある人々を規制したら?」というもので、それは下記抜粋部分に符合するものになります。ネタ本が4年前の本だから記述が現在の状況と符合がドンピシャということはないので、そこはご了承ください。

 

 あと、以下のことは国際政治、外交の空気にも関連してて、学際的なコラボレーションに期待するしかないのですが…抜粋とは無関係ながら、現状の僕の関心です。

 

 アベノミクスは社会心理的には*2、「中国や朝鮮半島の二国に我慢し続けた結果、保守層の堪忍袋の緒が切れた」現象だったと仮定すると(?)、一方では、韓国発の通貨危機が昔あったことも見なかったことにするし、他方では、「中国や北朝鮮に対して、為替操作国だと今までは非難していたのに非難される側になりそうですよね」という指摘も目の隅に追いやる振る舞いもなんとなく納得できる面がある。*3

 

そういうことが平気でできてしまう根源。これや如何。

 

風光明媚な日本だけが「美しい国」だとは思わないということを、第一次組閣のときにもネット内外でツッコミされていたけど、国の経済政策がモラルハザードになるかもしれないこと、若干泥臭く醜くなることも厭わないのかな。

 

経済理論的に正しければ、他国の経済を必要以上に乱すことがありえても結果オーライ。ということ?

 

資本主義の暴走をいかに抑えるか (ちくま新書)

資本主義の暴走をいかに抑えるか (ちくま新書)

 

以下、抜粋です。該当箇所にご興味があれば、どうぞ読んでみてください。できれば、経済学を専攻されている人たちが吸収した上で、正しく再解釈して、身近な人達に膾炙されることを希望します。僕のは冒頭にも述べましたが、半ばネタですので。

 

世界最大のミューチュアル・ファンドの創始者であるジョン・C・ボーグルは、アメリカ型「証券化」資本主義を『マネージャー資本主義』と呼んで批判する。この定義は、1930年代にバーリとミーンズが行った「経営者資本主義」という定義とは内容が異なる。バーリとミーンズの定義は、株式所有分散化の結果、株式会社の「経営者支配」が生じるという内容であった。だが、現代はひと握りの機関投資家が米国株全体の半分以上を保有*4している。この機関投資家と企業経営者が手を組んで株主の利益をかすめ取っているというのである。*5

(中略)

 1982年から2005年初めにかけて、米国株は複利ベースで年率13パーセントのリターンを生み出している。82年に株を買って持ち続けた投資家は、現金を16倍以上に増やすことができた計算である。だが、現実には勝ち組と負け組が存在した。勝ち組は、バブル絶頂期にストックオプションを通じて大量に取得した自社株を売却した企業経営陣と、新規上場して保有株を売却した企業家、そして金融仲介機関であった。前二者、すなわち自社株を売却した経営陣と起業家への富の移転を、彼は1兆ドル以上と推定している。後者、すなわち投資銀行、ブローカー、ファンド運用会社への富の移転は手数料の支払いであり、1兆2750億ドルを超える。

 では敗者は誰か。株式を購入し手数料を支払った一般の個人投資家である。(中略)敗者には株式の発行体である企業も含まれる。ストックオプション が行使されれば一株当たりの利益が希釈化されるので、これを避けるために大量のオプションを格安価格で発行した企業が後で高い価格で株式を買い戻しているからである。最終的に損をしたのは企業ではなく株主である。

(中略)

 結局、一般投資家から企業インサイダーと金融仲介機関に2兆ドルを超える富が移転したことになる。

(注:この後、日本でいうと会社法等が射程に入れている株主と経営者との利益相反問題や、有価証券取引法や金商法等が射程に入れている投資家とファンド・マネジャー、金融仲介機関との利益相反問題の描写が続きます。)

 彼の主張を裏付ける一つのデータがある。アメリカの金融業界が占める付加価値と利益のシェアの比較である。金融業(金融・保険・不動産・レンタルリース)が生み出す付加価値の対GDPは1970年代後半の15パーセントから2000年代の20パーセントへと徐々に上昇している。これに対して、国内全産業の企業利潤に占める金融業(FRBを除く)のシェアは、70年代後半の15パーセント前後から90年代には20パーセント台に上昇し、2000年代に入ると30パーセント台に上昇し、03、04年には40パーセントを超えている(図・省略)。このデータは、近年、富の金融仲介機関への移転が起こっていることを示している。*6

 そういうわけで、銀行を規制しろ…ではなくて、証券会社とか、信託銀行、信託管理会社等といった、仲介手数料で食べている人たちを効率的に規制したらいいんではないかと思ったりするんです。どう効率的かは偉い官僚さんたちが考えることですけど。

 

こういう状況下で、日本経済のポートフォリオを眺めながら、(実は痛し痒しで)規制緩和政策しかないということになったのかもしれませんが、実はアメリカにその手の人たちの規制を時宜に応じて要請することで(2009年当時なのですが…)緩衝材になることもあったかもしれない。

 

それは外交技術の問題で、僕の手の届く場所ではありませんが、一国民として気になるわけです。国益ってやつですので。それは当然、一部富裕層のためだけの利益ではない。

 

今後はTPPでさらに喰い荒らされる(かもしれない)と思うと、日本の政治家が不勉強なのか、官僚が情報隠蔽していて知りようがないからか(両方か?)、愛国心がオーバーロードして憂国の徒に変貌してしまいます。

 

アノニマスウィキリークスの面々や、スノーデン容疑者みたいにハックやら情報漏洩やらできる技能があればいいんだけどね。もちろん、技能を仮に得られたとしても、用いる範囲は不正を正す義賊としてってことで、濫用はしませんけどね…。文系人間の哀しさ。

*1:まあ、これは政治家や官僚、裁判官、医者、弁護士その他法曹といった権力的な立場に既にありながらも庶民を志向するという含意があるので、「そこを目指す段階にあるに過ぎない人間」は、理念倒れなんですけどね…。

*2:うーむ、同じ現象ながら行動経済学的に、でもあるのかな

*3:面があるというのは、色んな換言がありうるでしょうけど、ここでは、僕が本心で完全に同調するわけではないが、小理屈ではわかるという状態です。

*4:抜粋者注:保有に傍点で強調。

*5:出典は、ボーグル『米国はどこで道を誤ったか』とあります。

*6:企業の本筋は、僕が習った限りでは、かつてない付加価値を生み出すことへの対価をもらって永続的発展を目指すはずですよね。企業寿命50年説とかあるがそれはおいて…。アメリカの金融業界が道を誤ってるとすれば、それはまさに、付加価値が微増しかしてないのに、利潤を貪っているという点ではないでしょうか?